社用車のデータ管理について解説
社用車のデータ管理の重要性
社用車を使用する企業にとって、データの管理がなぜ重要なのか説明します。
データ管理の役割と効果
社用車のデータ管理は、運転者が事故を起こさない仕組みや、有事の際の対応策を作成するのに重要な役割を担っています。
効率的な車両運用のためのデータ管理
車両管理台帳を作成し運用することは、社用車のリスク回避やコスト管理に役立ちます。
- ・記載内容:「車両特定」「車両状況」「車両保険」など。
- ・管理方法:「紙」「Excel」「システム」など。
コスト削減とリスク管理への寄与
企業の担当者は、運転者の置かれている状況をいつでも確認し把握できるわけではありません。データ管理を活用して、社内ルールを作成し徹底させることや車両の整備や点検を行うことは、運転者と社用車の安全を守ることに繋がります。また、エコドライブを心がけることは、事故の予防だけではなく燃料コストの削減にも繋がります。
法規制遵守とデータ透明性の確保
「道路交通法施行規則」により、業務用車両を5台以上保有する企業に対して、道路交通法を遵守するように運転者を監督する「安全運転管理者」の選任を義務づけています。管理データは、人を介する台帳よりもシステムを導入して情報を一元管理するほうが、透明性を確保できます。
運転者情報管理
社用車を使用する運転者の情報管理には、プライバシー保護への配慮が必要です。
運転者の個人情報の安全な管理
個人情報の扱いには慎重になる必要があります。保有と削除のルールを決めて運用し、違反したファイルがないかチェックする周期を決めます。ルールには以下のような項目を取り入れましょう。
- ・情報の記録と更新:記載内容を定期的に確認し、情報に変更がある場合は迅速に更新する。また、保存期間の遵守を徹底する。
- ・アクセス管理:アクセス権限を適切に設定し、閲覧・編集履歴を記録する。また、セキュリティ対策を講じる。
- ・バックアップ体制:災害やシステム障害、ハッキングなど予期しない事態が発生した場合に備え、バックアップを作成する。
管理ルールや体制を構築したら、社内へ周知させることが重要です。
運転歴、違反歴、事故歴の記録
運転者の起こした事故や交通違反の詳細を正確に記録することは、企業の安全基準を評価する上でも重要です。将来起こり得る事故を防ぐためのリスク評価と改善策を策定するのに役立ちます。
安全運転トレーニングと適性評価
交通事故のリスクを下げるためには、安全運転への継続的な取り組みが大切です。運転者には個人の運転特性に合わせて、社用車を運転する際の心構えと運行の安全を確保するために遵守すべき危険予測や回避、緊急時における対応方法など、基本的事項を理解させます。
車両データ管理
車両の情報を正確にデータ化し、効率的に運用します。
車両の仕様と履歴の追跡
車両本体の「メーカー」「型式」「車台番号」「初度年登録年月」「車名」など、固有の情報を記録します。
購入日、価格、減価償却の管理
車両の「購入・契約年月日」「購入先」「購入・リース金額」「原価償却期間」「廃車・解約年月日」などを記録します。
保険と車検のスケジュール管理
車両の「車検有効期限」「次回車検日」などの記録、保険については「契約年月日」「契約期間」「保険会社」「証券番号」「保険金額」「代理店名」「補償内容」などを記録します。
運用データの効果的管理
データを効果的に運用管理するために気をつけるポイントについて説明します。
走行データの管理
走行に関するデータを収集分析し、コスト削減に繋げていきます。
走行距離と燃料消費量の追跡
車両の「使用部署」「使用者」「使用目的」「走行距離」「燃料補充量」などを記録します。
燃費データの分析と改善策
燃料の高騰は続いています。毎日の走行距離と燃料給油情報をExcelやスマートフォンアプリに入力し、燃費データの分析を行います。カタログ燃費との差異を明確にして、運転者の意識向上に結びつけ、燃料費コストの改善に繋げます。
エコドライビングの推進
「警察庁」「経済産業省」「国土交通省」「環境省」の4省庁が設置したエコドライブ普及連絡会では、燃料消費量や CO2排出量を減らして地球温暖化防止につなげるエコドライブの普及・促進を図るため、以下のように「エコドライブ10のすすめ」を策定しています。
- ・ふんわりアクセル「eスタート」
- ・車間距離にゆとりをもって、加速・減速の少ない運転
- ・減速時は早めにアクセルを離そう
- ・エアコンの使用は適切に
- ・ムダなアイドリングはやめよう
- ・渋滞を避け、余裕をもって出発しよう
- ・タイヤの空気圧から始める点検・整備
- ・不要な荷物はおろそう
- ・走行の妨げとなる駐車はやめよう
- ・自分の燃費を把握しよう
メンテナンスと修理の記録
社用車のメンテナンスを適切に行い、故障などのトラブルを回避します。
定期メンテナンスの履歴管理
日常点検は社用車を所有する企業が自ら行うことのできる点検です。実施した際には、全ての項目について結果を記録します。異常がある時には、運転せず専門家の指示を仰ぎます。そうすることでトラブルや故障による事故を未然に防ぐことができます。
修理履歴とコスト分析
車両の修理について、「事故発生日」「事故内容」「修理箇所」「修理内容」などを記録します。またコストが適切であるかを精査します。
メンテナンス計画の最適化
社用車は車検や修理に伴い、運転者が利用できない日が発生します。思わぬ営業機会の損失や営業効率の低下を招かないように、メンテナンス計画を考慮して管理を行います。
運用コストの管理
社用車を運用するにあたって発生するコストについて、しっかりと管理をします。
燃料補給とタイヤ交換のコスト
社用車の運用において、最も頻繁にかかる経費は燃料代です。ガソリンを入れる回数が多ければ、経理業務は煩雑になり人件費にも影響が出ます。一ヶ月分の代金をまとめて支払う、毎月掛払いにするなどの対策が必要です。また、安全な走行のためにはタイヤの交換が必要です。タイヤを交換せずに使い続けると、摩耗によるスリップ事故やタイヤバーストによる重大事故につながる可能性がありますので、コストはかかりますが定期的に交換をしましょう。
運用関連コストの全体的な管理
車両に関する全ての情報をトータルで管理することで、抜け漏れのない正確なコストを集計することが可能になります。
コスト削減のための戦略立案
燃料補給はガソリンスタンドでするにしても、オイルやタイヤなどの消耗品に関しては取扱い店を比較し、個別に購入や交換をする方が安く済む可能性があります。コスト削減を考慮して車両を導入するなら、普通車ではなく軽自動車を導入する選択肢もあります。
事故とコンプライアンスの管理
社用車で事故を起こした際の対応策と、守るべき法規則について説明します。
事故管理とリスク軽減
ひとたび事故が起きると、やらねばならない事柄が多く出てきます。詳しく記録を取り社内で改善策を実施して、次に活かすことが大事です。
事故発生時の詳細記録
詳細な経緯をまとめた事故報告書を準備し、事故が起きた時には経営陣や関係者に対して、対応策と再発防止策を含めた状況を報告するようにします。事故報告書は、法的な問題に備え、社内認識の統一と社内外への透明性を高めるために必要な文書です。
事故に関連するコストの管理
企業には使用者責任と運行供用者責任があり、賠償責任を負う必要があります。また、破損個所の修理費や保険料のアップも考えられます。
事故後のフォローアップと改善策
事故を起こした運転者のメンタルケアは企業の重要な責務です。そのうえで事故を起こさないための研修を実施し、従業員の安全運転意識を高めます。事故の減少は営業機会損失の低減や企業イメージ失墜を防ぐことに繋がります。
法的文書とコンプライアンス
社用車を運用するには、法規制を把握して遵守する必要があります。
法規制遵守のための記録管理
「道路交通法施行規則」では「安全運転管理者」の選任とともに、「運転日報」の記録と保管を義務付けています。日報は最低1年間の保管が義務となっています。
契約書とリース契約の管理
購入契約書やリース契約書は、事故や保険申請の際に必要となりますので適切に保管しておきます。契約締結時には、内容について間違いがないかをしっかりと確認しておかないと、トラブルになる可能性がありますので注意が必要です。
テレマティクスデータの利用
「テレマティクス」とは、「テレコミュニケーション=電気通信」と「インフォマティクス=情報科学」を合わせた造語です。自動車と通信システムを組み合わせて、リアルタイムに情報を提供してくれるサービスです。
GPSによる車両追跡の利点
社用車の稼動状況や位置情報、運転者の情報などをリアルタイムに管理できます。長時間にわたる運転や長時間休憩をしている車両に注意を促すことも可能です。
運転行動分析による安全性向上
走行中の車両データをオンライン上で管理することで、「急発進」「急ブレーキ」「ながら運転」を抑制し、安全性を向上させることができます。さらに、既定の走行ルートに対して遠回りをしていたり、アクセルを強く踏む運転者に対しては改善を促すこともできるので、安全性の確保や移動の効率化にも繋がります。
車両の健康状態のモニタリング
車両の健康診断が可能です。各所に付けられた車載センサーのデータで車両状況をリアルタイムに把握し、必要に応じて注意喚起や整備業者との仲介を行います。
まとめ
社用車をデータ管理し情報を一元化することで、業務の効率化が可能になります。企業の財産である従業員を守るために、しっかりとルールを定めて運用していきましょう。