社用車の私的利用が招くリスクとは？経営者が必ず押さえたい問題点・注意点と対策
oPPice編集部
目次
1. なぜ社用車の私的利用はリスクを招くのか？
1-1. そもそも社用車とは何か？業務用車両の基礎知識
営業車・配送車・役員車など多様な社用車の定義
社用車とは、会社が業務遂行のために所有またはリース契約で利用する車両を指します。営業活動、荷物の配送、役員の送迎など用途は多様です。利用目的を明確にせず曖昧なまま運用すると、私的利用との線引きが難しくなり、管理責任が不明確になるリスクをはらみます。まずは社用車の位置付けを組織内で正確に定義しましょう。
「社有車」と「リース車」の違いを理解する
社有車は会社が購入し自社資産として保有する車両、リース車はリース会社から一定期間借り受けて使用する車両を指します。リース車両は契約上の使用制限がある場合も多く、私的利用が禁止されているケースも存在します。所有形態によってリスクと管理方法が異なるため、利用前にその違いをしっかり確認しておきましょう。
業務専用車両と福利厚生利用のグレーゾーン
社用車を福利厚生の一環として私用利用を許可するケースも見られますが、明確なルールなしに運用するとトラブルの原因になります。たとえば事故時の責任範囲が曖昧になり、会社負担が拡大する恐れもあります。あくまで業務用を基本とし、私用利用を認める場合は社内規程で明文化しておくことが重要です。
会社資産としての社用車の重要性
社用車は単なる移動手段ではなく、会社の大切な資産です。購入費用、維持費、保険料、税金など多くのコストを伴い、適切な管理が求められます。私的利用による事故や破損は、資産価値の毀損や予期せぬ損害リスクを引き起こしかねません。経営者として社用車を「守るべき資産」として捉える意識が不可欠です。
1-2. 社用車を私的利用すると発生するリスク一覧
交通事故時に会社が負う賠償責任リスク
社用車で私的利用中に事故を起こした場合、例え業務外であっても会社が賠償責任を負うリスクが存在します。特に法人名義の車両は、対外的には「会社の車」として認識されるため、事故の被害者や第三者からの請求が会社に及ぶことも少なくありません。保険適用の有無も含め、リスクは極めて高いといえます。
情報漏洩・盗難による社会的信用低下リスク
社用車にはPCや書類など機密情報を積んでいることも多く、私的利用中の盗難や紛失により情報漏洩が発生するリスクもあります。万が一、顧客情報や営業機密が漏洩した場合、会社の社会的信用は大きく失墜し、顧客離れや取引停止に直結する恐れもあるため、非常に深刻なリスクです。
経費計上・税務調査リスク
社用車は業務使用が前提で経費計上されています。私的利用が常態化していると、税務調査で否認され、追加課税やペナルティを受けるリスクがあります。法人経費の適正な管理が問われる場面で、私用利用が問題視されると会社財務への影響も甚大です。明確な使用記録管理が求められます。
社内規律の緩み・モラル低下リスク
社用車の私的利用を黙認すると、社内全体の規律が緩み、コンプライアンス意識が低下する恐れがあります。小さな私用利用から、不正使用や重大な規則違反へと発展することもあります。企業文化の健全性を守るためにも、社用車運用ルールの厳格化は避けて通れません。
1-3. リスクを放置すると招く深刻な経営ダメージ
高額賠償・損害賠償訴訟リスク
私的利用中の事故で第三者に重大な損害を与えた場合、多額の損害賠償請求や訴訟に発展する可能性があります。最悪の場合、会社の支払能力を超える賠償金が発生し、経営破綻の引き金になるリスクも存在します。想定外の財務ダメージを防ぐには、そもそも私用リスクを回避することが不可欠です。
保険未加入・補償対象外による財務悪化
私的利用中の事故は、契約している自動車保険の補償対象外とされる場合もあります。補償が受けられない場合、修理代や賠償金を会社が全額負担する事態となり、突発的な資金流出によって財務状況が一気に悪化するリスクを抱えることになります。
顧客離れ・取引停止リスク
社用車私的利用が発覚し、それが事故や不祥事に発展した場合、顧客からの信用を失い取引停止や契約解除に至るケースもあります。特にBtoB取引においては、コンプライアンス違反が極めて重く受け止められるため、企業間の信用関係に致命的なダメージを与えるリスクが高いです。
社員間トラブル・内部統制崩壊リスク
一部の社員の社用車私的利用を放置すれば、他の社員からの不満や社内不公平感が広がり、モチベーション低下や内部対立に発展する可能性があります。結果として、組織の統制が取れなくなり、経営全体のリスク管理能力が低下するという悪循環を招きかねません。
2. 社用車私的利用を許容する場合の注意点とルール策定
2-1. 社用車の私的利用を認める際の基本ルール
明確な「業務用」と「私用」の線引き
社用車を私的利用する場合には、「業務」と「私用」の使用区分を明確に定義することが重要です。曖昧な運用は、税務リスクや保険適用外トラブルを招く要因となります。例えば、休日使用や通勤使用を許可する場合も、条件を文書化し、社内で周知徹底しておくことが求められます。
利用可能時間・範囲・対象者を限定する
私的利用を認める場合でも、利用できる時間帯（例：業務終了後～翌朝まで）や範囲（自宅周辺のみなど）、利用対象者（正社員のみ、管理職限定など）を明確に定める必要があります。これにより、不要なリスク拡大を防ぎ、管理コストも最小限に抑えることが可能になります。
利用申請・承認フローを設ける
社用車を私用で利用する際には、事前の申請と承認プロセスを必須とし、無断使用を防止します。申請書や専用フォームによる申請を義務付け、誰が、いつ、どの目的で利用するかを明確化しておくことが、運用トラブル防止に直結します。
緊急時対応マニュアルを整備する
私的利用中の事故・故障・トラブル発生時に備えて、対応手順を記載した「緊急時マニュアル」を整備しておくことが不可欠です。事故報告の連絡先、保険会社への連絡方法、社内上司への報告ルートなどを明確にし、従業員に周知徹底しておきましょう。
2-2. 就業規則・社内規定に必ず盛り込むべき項目
私的利用時の自己負担費用規定
私的利用分の燃料代や高速道路料金、駐車料金などは、原則として利用者本人の自己負担とする規定を設ける必要があります。会社負担を続けると税務リスクも発生するため、負担区分を明確にし、運用ルールを社内文書化しておくことが重要です。
事故・違反時の責任所在明確化
私的利用中の事故・違反が発生した場合の責任の所在と、ペナルティ規定を明記することが不可欠です。具体的には、損害賠償責任や懲戒処分対象となるケースをルール化し、従業員に事前告知しておくことで、トラブル時の対応を円滑に進めることができます。
燃料代・駐車料金の個人負担ルール
業務外の移動で発生した燃料費、駐車場利用料については、必ず個人負担とするルールを規定し、利用者に領収書提出を求めるなどの管理方法を導入します。小さなコスト管理の徹底が、社内不公平感や無用な経費流出を防ぐポイントです。
定期的な運転記録・管理義務の明記
社用車私的利用を認める場合でも、走行距離や利用目的を記録・報告させる義務を設けましょう。走行記録簿の提出や、GPS管理システムの導入により、私用の範囲を可視化し、不正利用や管理漏れを防止することができます。
2-3. リスクを最小限に抑えるための運用実務
車両管理者・運行管理者の設置
社用車運用を安全かつ適正に管理するため、車両管理者や運行管理者を正式に任命する必要があります。日常点検、運行状況管理、利用者教育を定期的に行い、リスクの早期発見と是正を徹底します。
GPS・ドライブレコーダーによる運行記録
走行データを自動で記録できるGPS管理システムや、映像記録を残すドライブレコーダーを導入することで、万が一のトラブル時に事実確認が可能となり、会社としてのリスクヘッジに大きく貢献します。導入コスト以上の効果が期待できます。
アルコールチェック義務化への対応
道路交通法改正により、企業は業務使用車両ドライバーにアルコールチェックを義務づけられています。私的利用中でも対象とするかどうかを社内で明確に決め、アルコール検知器の運用ルールを整備することが必要です。
違反・事故発生時の迅速な社内対応体制
違反や事故が発生した場合に備え、速やかに上長・管理部門・保険会社へ報告・対応できるフローを構築しておきましょう。初動ミスによる対応遅れは、後の損害拡大につながりかねません。社内周知と訓練を徹底することがカギとなります。
3. 社用車リスク管理を強化するための実践策
3-1. 社用車利用ルール周知と教育の徹底
入社時研修・定期安全運転講習の実施
社用車を使用する全社員に対して、入社時の段階で運転ルール・社用車ポリシーの研修を実施し、その後も年1回以上の定期安全運転講習を義務付けると効果的です。社用車利用に対する意識向上が、事故防止とリスク低減に直結します。
社内イントラ・マニュアル配布
社用車利用ルールや緊急時対応フローを、イントラネット上でいつでも閲覧できるようにし、紙のマニュアルも配布します。情報を常に可視化しておくことで、現場で迷いが出た際も迅速に正しい行動を取れる体制を整備します。
違反事例・事故例を用いた注意喚起
過去に発生した違反事例や事故事例を具体的に紹介し、リアルなリスクを社員に伝えることが有効です。「自分ごと化」させることで、安全運転意識を一層高め、事故リスクの抑制につなげることができます。
ペナルティ制度・表彰制度の併用運用
違反者への罰則規定だけでなく、安全運転実績の良い社員を表彰する制度を併用することで、社内モチベーションを高めつつルール遵守を促進できます。インセンティブ設計を工夫することが、安全文化の醸成に役立ちます。
3-2. 管理負担を減らすためのITツール活用
車両管理システム（フリート管理ツール）導入
手作業による車両管理には限界があります。クラウド型の車両管理システムを導入することで、運行状況、車検・保険管理、利用状況の一元管理が可能になり、管理負担を大幅に削減できます。データ蓄積によるリスク可視化にも貢献します。
運行日報のデジタル化
これまで手書きで提出していた運行日報をアプリやシステムでデジタル化すれば、リアルタイムでの運行把握や、データ分析によるリスク検出が可能になります。運行管理レベルを飛躍的に向上させる有効策です。
保険・点検・車検の自動リマインド管理
社用車の保険更新、法定点検、車検スケジュールを自動管理できるシステムを活用すると、うっかりミスによる無保険運行や車検切れリスクを防げます。管理ミスによるリスクをゼロにするため、必須の運用改善策といえるでしょう。
社用車予約システムで利用状況可視化
社用車利用の予約をシステム化し、誰がいつどの車両を使うかをリアルタイムで把握できる環境を整えます。ダブルブッキングや不正利用防止に役立つだけでなく、車両稼働率向上にもつながります。
3-3. いま注目の法人向け車両管理サービス比較
【SmartDrive Fleet】リアルタイム運行管理・事故削減支援
SmartDrive Fleetは、GPSによるリアルタイム運行管理と、安全運転指導サポートを提供する車両管理サービスです。走行データ分析によって事故リスクを可視化し、運転行動改善を促進できる点が強みです。コスト削減にも寄与します。
【Bqey(ビーキー)】車両・運転者一括管理ツール
Bqeyは、社用車だけでなくドライバー情報も一括管理できるオールインワンツールです。社内利用規程の遵守状況の可視化や、事故・違反履歴の自動記録機能を備えており、内部統制強化に役立つ管理ツールです。
参考：
Bqey 公式サイト
【Offseg（オフセグ）】事故防止・アルコールチェック支援
Offsegは、ドライブレコーダーによる映像記録に加え、アルコールチェック機能にも対応した車両安全管理サービスです。ドライバーのリスク行動をリアルタイムで検知できるため、事故未然防止とコンプライアンス強化を両立できます。
参考：
Offseg 公式サイト
導入時は「コスト・管理機能・サポート体制」で比較検討
法人向け車両管理サービスを選定する際は、導入コストだけでなく、提供される機能の範囲や運用サポート体制まで含めて総合的に比較検討することが重要です。自社の規模や運用実態に最適なサービスを選ぶことで、リスク管理の質が格段に向上します。
