社用車の使用中に起こした駐車違反について解説
駐車違反とは?
駐車違反には「駐停車違反」と「放置駐車違反」の2種類があります。それぞれの違いについて説明します。
駐停車違反
駐車とは、車両が持続的に停止する状態を指します。具体的には、お客さんや荷物を待つための停止や5分を超える荷物の積み下ろし、故障や他の事情での停止も該当します。さらに、ドライバーが車両から離れてすぐに運転できない状態での停止も駐車と見なされます。
駐車が禁止される場所は、道路交通法第45条に基づき定められています。駐車禁止の標識や標示がある場所では駐車することができません。また、駐車場や車庫などの出入口から3メートル以内、道路工事区域の端から5メートル以内、消防用設備の出入口や消火栓周辺、火災報知機から1メートル以内の場所も駐車が禁止されています。
一方、停車とは、短時間で車を一時的に停止させる行為のうち、駐車にはあたらない場合を指します。具体的には、人の乗り降りや5分以内に荷物を積み下ろす場合、ドライバーがすぐに運転を再開できる状態での停止が該当します。
駐車だけでなく停車も禁止されている場所は、道路交通法第44条に基づき定められています。まず、駐停車禁止の標識や標示がある場所では停車も駐車もできません。また、軌道敷内、坂の頂上付近や急な勾配の坂、トンネル内、交差点およびその端から5メートル以内、道路の曲がり角から5メートル以内、横断歩道や自転車横断帯とその端から前後5メートル以内も停車および駐車が禁止されています。
駐停車違反では、警察官が直接ドライバーに対して違反を告知し、通称青キップといわれる「交通反則告知書」を交付します。
放置駐車違反
放置駐車違反とは道路交通法第51条の4項に基づき、駐停車禁止区域に車両を停め、その場にドライバーがいない場合に適用される罰則です。ドライバーが警察官や交通巡視員の要請に応じることができず、車両をすぐに移動させられない状況がそれに当たります。停車時間の長さには関係なく、数分間でも車から離れていると放置駐車違反とされる可能性があります。
違反が認められると、主に車両のフロントガラスに「放置車両確認標章」という黄色のステッカーが貼られます。
駐停車・放置駐車の違い
駐停車とは、ドライバーが車内にいて、警察官や交通巡視員から移動を求められた際に、即座にそれに応じられる状態を指します。その場から移動するように命令があればすぐに車を動かさなければなりません。
一方で放置駐車は、車が違法に駐車されていてドライバーが車両から離れているため、すぐには運転できない状況を指します。停止時間の短さや車からの距離、エンジンが始動しているか、ハザードランプが点滅しているかは関係がありません。警察官や交通巡視員の指示で運転できない場合、放置駐車と見なされます。
社用車の駐車違反に対する罰金や違反点数
駐車違反に対する罰金や違反点数について説明します。駐車違反をすることで周囲にどのような悪影響をおよぼすかを認識したうえで運転を心がけましょう。
駐停車違反の場合
駐停車違反の場合は以下の通りです。
①駐停車禁止の標識がある場所
違反点数は2点です。
罰金は、以下の通りです。
- ・普通車:12,000円
- ・大型車:15,000円
- ・二輪車:7,000円
- ・原付:7,000円
②駐車禁止の標識がある場所
違反点数は1点です。
罰金は、以下の通りです。
- ・普通車:10,000円
- ・大型車:12,000円
- ・二輪車:6,000円
- ・原付:6,000円
放置駐車違反の場合
放置駐車違反の場合は以下の通りです。
①駐停車禁止の標識がある場所
違反点数は3点です。
罰金は、以下の通りです。
- ・普通車:18,000円
- ・大型車:25,000円
- ・二輪車:10,000円
- ・原付:10,000円
②駐車禁止の標識がある場所
違反点数は2点です。
罰金は、以下の通りです。
- ・普通車:15,000円
- ・大型車:21,000円
- ・二輪車:9,000円
- ・原付:9,000円
社用車で駐車違反を起こした場合の責任の所在
社用車で駐車違反を起こした際の責任は、企業と個人、どちらにあるのかを説明します。
駐車違反を起こしたドライバー個人に責任がある
社用車を利用して駐車違反が発生すると、その責任は基本的にドライバーである個人に帰属します。会社の所有車であっても、駐車違反による行政処分や反則金の負担は、ドライバー自身が引き受ける形となります。道路交通法では個人の責任を明確にしています。
ただし、企業には従業員が安全に運転できるように教育を施し、再発防止策をしっかりと検討し実施する責任があります。法律を遵守し安全運転を推進することは、企業の社会的責任です。そのため、企業が運転者に対して具体的な指導を行い、意識啓発をすることが求められています。
企業が駐車違反の責任を負うことはある?
前述したように、社用車での駐車違反は、原則として責任はドライバーにあります。しかし、特定の状況では企業側が責任を負うこともあります。それは、企業が従業員に対して駐車違反を容認もしくは助長する指示を出した場合です。このようなケースでは、使用者責任が問題視される可能性があります。
また、2006年の道路交通法の改正により、ドライバーが反則金を支払わず、またドライバーが確定しない場合には、企業側に違反金が課されるようになりました。ドライバーが警察署への出頭に応じず、決められた期限までに反則金を納付しなかった場合、企業はその未払いの反則金を支払う責任を負うことになります。この責任を放置すると、社用車の車検を受けられなくなり、企業の事業運営に影響を及ぼすリスクがあるため注意が必要です。そして、反則金の支払いが困難な事情がある場合には、企業がその金額を肩代わりする選択肢もあります。
企業は、駐車違反を防ぐための指導や、違反を起こしてしまった場合の対処方法を教育するなど、社内の管理体制を整えていく必要があります。
社用車で駐車違反を起こした場合の対応
社用車で駐車違反を起こした場合の対応と手続きについて説明します。
内容に従い手続きをおこなう
社用車で駐車違反を犯した際の対応について、まず、駐停車違反をした場合には、その現場でドライバーが警察官や交通巡視員から直接指導を受けることになります。その後、ドライバーのもとに反則金の納付書が郵送されますので、その内容に従って反則金を支払うことで手続きは完了します。
一方、放置駐車違反に関しては、ドライバーがその場に居ないため現場での指導は行えません。違反者は車両に貼られた「放置車両確認標章」を確認したら、管轄の警察署に出頭する必要があります。そこで反則金を納付し違反点数の処分を受けて手続きは完了します。
警察へ出頭しないとどうなる?
前述の通り、2006年の道路交通法改正により、社用車での放置駐車違反が発生した際に、ドライバーが警察への出頭を怠ると、使用者として車検証に記載されている企業が責任を問われることになりました。具体的には、該当する企業宛に「放置違反金の仮納付書」と「弁明通知書」が送付されます。
違反金を支払わない場合はどうなる?
社用車で駐車違反を起こし、違反者である従業員が反則金の支払いをしなければ、企業が負担をしなければならない場合があります。普段から、駐車違反が発生した際には迅速に報告し、適切に対応するよう従業員へ指導しましょう。報告の徹底は問題の早期解決に不可欠であり、違反の未然防止にもつながります。
適切に対応しなかった場合にはペナルティが課せられる
使用制限命令を受ける
半年以内に3回以上の放置駐車違反を繰り返した際に、「使用制限命令」が下されます。また、過去1年以内に同様の命令を受けた車両が再び違反を行った場合には、より少ない回数で使用制限の対象とされます。
具体的な処分内容としては、命令を受けるとナンバープレートが取り外され、一定期間その車両の使用が禁止されます。その期間中、当該車両を運転することは厳禁で、もし命令に反して使用した場合は、別途罰則が科せられますので注意が必要です。
車検を受けられない
社用車で駐車違反が発生した場合に、罰金を長期間放置して滞納状態になると、「車検拒否制度」に基づき車検を受けられなくなります。陸運支局で車検証を継続検査しようとしても、放置違反金の滞納が確認されると受付自体が拒否されます。
処分を避けるためには、違反した際には速やかに対応する必要があります。罰金を放置して滞納すると車両を業務として活用できなくなり、経営へ直接影響を及ぼす可能性もあります。
まとめ
社用車の使用中に起きた駐車違反について解説しました。社用車での駐車違反はドライバー個人の責任が重く問われますが、企業もその影響を受ける可能性があります。日常的に、企業は従業員教育を通じて、交通ルールの徹底や安全意識の啓発を行い、違反の未然防止を図ることが重要です。企業と従業員がそれぞれの責任を果たすことで、企業は持続的な成長を遂げるでしょう。