社用車の整備について解説
社用車の整備や点検の必要性・重要性
社用車の整備や点検は、安全性確保と事故防止に不可欠です。定期的なメンテナンスで車両の性能を維持し、故障によるリスクを低減します。また、燃費向上やコスト削減にもつながるため、適切な管理は重要です。
使用者の義務として法令で規定されている
道路運送車両法において自動車の保守管理の責任は、使用者自身にあると明確に定められています。これは自己管理責任とよばれ、自動車の点検と整備を適切に行うことが使用者の義務とされています。
その第47条では、使用者が責任を持って自動車の点検を行い、必要に応じて整備することで、自動車を常に保安基準に適合した状態に保つことが求められています。自動車には走行距離や時間の経過とともに劣化・摩耗する部品が多く使用されており、性能や耐久性の低下は避けられないため、定期的な点検と整備が不可欠なのです。
自動車メーカーはその特性を十分に理解したうえで、適切な保守管理がなされることを前提に車両を製作しています。そのため使用者は、自動車が常に良好な状態を保つよう、欠かさずに点検や整備を行う必要があります。
ドライバーや周囲の安全を守るための適切な点検整備は、事故防止だけでなく車両の長寿命化にもつながります。
整備不良などによる事故を防ぐ
社用車は企業の大切な資産であり、活動を支える重要なツールですが、日々の使用や時間の経過とともに、車両の各部品は少しずつ摩耗し劣化していきます。この見えない変化に気づかず放置すると、突然の故障や予期せぬ事故につながる恐れがあります。
頻繁に使用しない車両であっても油断はできません。バッテリーやエンジンオイルなど、使用頻度に関係なく劣化が進む部品もあります。
社用車の管理は、単なる車両のメンテナンスにとどまりません。日々の点検と定期的な整備は、従業員の安全を守り事業の継続性を確保する取り組みです。少しの異変も見逃さない姿勢が、リスクを事前に察知し重大な故障や事故を未然に防ぎ、従業員の命を守り企業の存続を支えます。
社用車の整備や点検の種類
社用車の整備や点検には、日常点検整備と定期点検整備、法定点検(車検)があります。
日常点検整備は義務ではありませんが、車両の性能を維持するために定期的に行うことをおすすめします。定期点検整備は義務化されています。実施しなくても罰則はありませんが、車両状態を良好に保つために1年ごとに実施しましょう。法定点検(車検)も義務化されており、必ず実施する必要があります。車検を受けないと車両の使用が禁止されますので注意しましょう。
日常点検整備
日常点検整備は、車を日々使用するドライバー自身が行える保守作業です。運転席に座ったり、エンジンルームをのぞいたり、車の周りを歩きながら目視確認するなど、比較的簡単に実施できるものです。
走行距離や運転状況に応じて適切なタイミングで行うことは、車の不具合を早期に発見する絶好の機会となります。普段から定期的に注意深く車両を観察することで、小さな異変にも気づきやすくなるでしょう。
日常点検整備は、深刻なトラブルを未然に防ぎ、安全な運転環境を維持することにつながります。
定期点検整備
自動車の安全性と性能を維持するために欠かせないのが定期点検整備です。これは道路運送車両法で定められた車両の使用者に課された義務です。
社用車を含む一般的な普通車や軽自動車など乗用車の定期点検整備には、1年点検と2年点検があります。1年点検は車検と車検の間の年に行われ、2年点検は車検時に実施されます。点検項目は、1年ごとに29項目、2年ごとに60項目の点検が必要となります。2年点検と車検は同じものではありません。同時期に行われることが多いため混同されがちですが、実際には別物です。
定期点検整備は日常点検と同様に使用者の責任ですが、専門的な知識や技術が必要となります。そのため、専門業者に依頼するのが一般的です。
法定点検(車検)
法定点検(車検)は正式には「自動車検査登録制度」といい、安全で環境に配慮した交通社会を実現するために制定された重要な制度です。道路運送車両法に基づき、車両の構造や装置が保安基準に適合しているかを定期的に確認します。社用車を含む一般的な社用車の場合には、新車の購入から3年後、それ以降は2年ごとに受ける必要があります。
自動車検査証の有効期間後も引き続き車両を使用する場合には、期限が切れる前に継続検査を受ける必要があります。通常は期限の一か月前から受検可能ですが、離島では二か月前からとなっています。
車検は、検査時点での車両の状態を証明するものではありますが、車検に合格したからといって、次の車検までの安全性が保証されるわけではありません。日頃から、自動車の点検や整備を適切に行い、安全運転を心がけることが必要です。
社用車の整備や点検をする方法
自身で行う日常点検
ドライバー自身が行う日常点検の15項目は以下の通りです。
①エンジンルームをのぞいて点検する5項目
・ウインドウォッシャー液の量
フロントガラスを清掃する液体です。ウォッシャータンク内の液面がFULLとLOWの間にあるかどうかをチェックします。
・ブレーキ液の量
ブレーキペダルを踏む力をブレーキシステムに伝える役割をもちます。ブレーキリザーバタンク内の量がMAXとMINの間にあるかどうかをチェックします。定期的に専用液を交換する必要があるため、定期点検の際に交換してもらいましょう。
・バッテリー液の量
化学反応により充電や放電を行う役割をもちます。バッテリー液の量がUliliERとLOWERの間にあるかどうかをチェックし、不足している場合は専用液を補充します。希硫酸であるため目や皮膚に触れないようゴーグルや手袋を着用して行いましょう。
・冷却水の量
エンジンを冷却し過熱を防ぐための液体です。冷却水が冷えている時にラジエータリザーバタンク内の量がMAXとMINの間にあるかどうかをチェックし、不足している場合は冷却水を補充します。
・エンジンオイルの量
エンジン内部で使用される潤滑油で、潤滑をはじめ冷却、清浄、防錆、密封と様々な役割をもっています。エンジンを停止した状態で、オイルレベルゲージを用いてオイル量をチェックします。不足している場合は、量を確認しながらエンジンオイルを補充します。
②車両のまわりを回って点検する4項目
・タイヤの空気圧
タイヤの設置部のたわみ状態を見て、空気圧が不足していないかどうかをチェックします。タイヤゲージを用いて点検する場合は、運転席のドアの内側やセンターピラーに貼られているラベルに記載された適正な空気圧になっていることを確認します。
・タイヤの亀裂、損傷および異状な摩耗
タイヤ全周に亀裂や破損がないかどうか、石や釘などの異物が刺さったり嚙み込んでいないかを目視でチェックします。タイヤの一部だけが摩耗していないかどうかも合わせてチェックします。
・タイヤの溝の深さ
部分的な摩耗がないかどうか、十分な溝の深さがあるかどうかをスリップサインで確認します。スリップサインは、タイヤ側面の矢印マークの延長線上にあり、溝の深さが1.6 mm以下になると現れます。
・ランプ類の点灯、点滅およびレンズの汚れ、損傷
ランプ類やレンズに汚れや破損異常がないか、点灯具合と点滅速度はどうかを目視でチェックします。
③運転席に座って点検する6項目
・ブレーキペダルの踏み具合およびブレーキの利き
ペダルを踏み込んだときに、踏み残りの具合(床板とのすき間)や踏みごたえをチェック。踏み残り具合をものさしで測り、基準値を満たしていることを確認するとより正確です。
・パーキング・ブレーキ・レバーの引き具合
レバーをいっぱいに引いたときに、引き具合が多すぎないか、あるいは少なすぎないかどうかをチェック。ペダル式の場合はペダルの踏み具合をチェックします。
・ウインドウォッシャーの噴射状態
ウォッシャー液を噴射して高さや向きが適当であるか、飛散しすぎていないか、またフロントガラスの汚れを落とせているかどうかをチェックします。
・ワイパーの拭き取りの状態
ワイパーを作動させたときに低速・高速がスムーズか、ウォッシャー液をきれいに拭き取れているかどうかをチェック。拭き取り状態が悪い場合は、ワイパーゴムを交換します。
・エンジンのかかり具合および異音
エンジンが速やかにかかるか、エンジン始動時やアイドリング状態で異音がしないかどうかをチェックします。
・エンジンの低速および加速の状態
エンジンが温まった状態でアイドリング時の回転数が安定しているか、アクセルペダルを徐々に踏み込んだときに引っかかりがないかどうかをチェックします。
整備や点検を行ってくれる店舗へ依頼する定期点検・法定点検
整備や点検を行う業者を紹介します。
カーディーラー
他の業者よりも安全面を最優先しており、質の高い点検や整備を実施しているため、価格は割高に設定されていることが多いです。メーカー純正部品を使った整備などに特徴があります。
車検専門店
比較的安い価格で受けられ、スピードが早いことがメリットとして挙げられます。余裕をもった部品交換など必要以上のサービスは行ってもらえないデメリットがあります。フランチャイズ化により整備や技術にムラが発生するのを防いでいます。
カー用品店
多種多様な部品を扱っていることから、国内外の幅広い車種に対応しています。国家資格を有した整備士が常駐しているため、技術面からみても安心で価格も割安です。
整備工場
ディーラーや大型カー用品店から独立した経験豊かな整備士や整備に特化したスタッフが対応するため、整備の質は高いです。車検専門店やカー用品店よりは高額になるがディーラーと比較すると安価な傾向にあります。
ガソリンスタンド
普段から給油をしている場所にそのまま依頼できる点がメリットです。営業時間が幅広いため、自身のライフスタイルに合わせて選ぶことができます。車検費用は安い傾向にあり、カー用品店と同等の金額帯です。
出張整備サービスを利用する
出張整備サービスは、専門の整備士が企業や指定の場所まで直接訪問し、その場で車両の修理や点検を行い、企業の幅広いニーズに対応しています。
具体的なサービス内容として、タイヤのパンク修理はもちろん、摩耗したタイヤの交換も依頼可能です。タイヤは車両の走行に直結する重要なパーツであるため、定期的な点検と交換が欠かせません。出張整備サービスであれば持ち込む必要がなく、専門の技術者がその場で適切な対応をしてくれます。
また、エンジンやブレーキなどの故障にも対応しています。専門知識と経験豊富な整備士が、原因を的確に診断し必要な修理や部品交換を行います。部品によっては取り寄せが必要な場合もありますが、迅速に対応してくれるため長期間車両を使えなくなる心配もありません。
さらに、定期点検も出張整備サービスの対応範囲です。エンジンオイルやブレーキオイルの交換、バッテリーの状態チェック、ランプ類の点検など、車両の状態をくまなくチェックし、不具合があれば即修理してくれます。定期的な点検は、車両の寿命を延ばし安全な走行を維持するために非常に重要です。
出張整備サービスの最も大きなメリットは、時間と手間を大幅に削減できる点です。これまでのように車両をディーラーや修理工場へ持ち込む必要がなく、社内担当者は本来の業務に集中できます。営業時間外や休日でも対応可能な場合が多く、巡回業務への影響を最小限に抑えられます。
サービスの質や料金は提供業者によって異なるため、複数の業者を比較検討することをおすすめします。
おすすめの出張整備サービス
最後に、おすすめの出張整備サービスを3社紹介します。自社ニーズに最もマッチした業者を選びましょう。
株式会社Seibii(セイビー)
東京都港区六本木に本社、神奈川県相模原市にオフィス兼自動車整備認証工場があります。
特徴
高い採用基準をクリアした整備士が高品質の整備を担当し、特殊車両や多様なメーカーに対応可能です。車検や点検、オイルやバッテリー交換から、ドラレコやカーナビの取り付け、さらには突然の故障にも対応する緊急出張まで行っています。セイビーの整備士は専門の教育プログラムと独自システムのもと、常に高い品質を維持しています。
費用
スタッドレスタイヤ履き替え:8,800円~
バッテリー交換:9,900円~
ドライブレコーダー取り付け:11,000円~
URL
https://seibii.co.jp/corporation/new株式会社Fixx
東京都新宿区に本社があります。
特徴
Fixxの名前の由来は、Fix(修理)とDXの融合からきており、国家資格を持つ熟練の整備士が企業のオフィスや指定場所に直接伺い、効率的かつ正確な整備を行います。整備工場まで車を運ぶ手間も長時間の待ち時間もなく、事前決済と鍵の受け渡しだけであとは仕事に集中できるため大変便利です。ETCやドラレコの取り付けから、オイル交換、バッテリー交換まで、幅広いニーズに対応しています。
費用
タイヤ交換:10,500円~
バッテリー交換:19,000円~
ドライブレコーダー取り付け(前方のみ):10,500円~
URL
https://business.fixbox.co.jp/株式会社ヤタベ
山口県下関市に本社と店舗があります。
特徴
小型車から大型トラックまで幅広い車種に対応し、下関市内旧4町を中心にサービスを展開。面倒なタイヤ交換から緊急時の対応まで幅広いサービスを提供し、就業時間外での作業も可能です。また、企業の車両管理業務の代行も依頼できます。現地でのタイヤ交換やバッテリー交換はもちろん、店舗でのオイル交換やアライメント調整など、お客様のニーズに合わせたサービスを提供し地域に貢献しています。
費用
店舗へお問い合わせをお願いいたします。
URL
https://www.yatabe1212.com/corporation/まとめ
社用車の整備や点検は、企業にとって欠かせない責務です。法令遵守はもちろん、従業員の安全確保や事故防止にもつながるため、日々の点検から定期的な整備まで、適切な管理と実施が求められます。
社用車の整備や点検をする方法にはさまざまな選択肢があります。それぞれ特徴がありますが、企業の規模や車両の数、用途によって最適な方法は異なります。トータルメリットを考慮に入れて、自社のニーズに合った選択をしましょう。