社用車の納車手続きについて解説
社用車納車の前準備
社用車を購入してから納車までには往々にして時間がかかるものです。社用車は大事な会社の資産になりますので、納車を待つ間に万全の準備を済ませておきましょう。
必要な契約書類の準備
社用車の契約には多くの必要書類があります。以下にまとめました。
契約書のチェックリスト
販売店と取り交わす「契約書」は入念に内容をチェックします。疑問に思ったことはその場で担当者に確認することが重要です。「契約内容」「契約期間」「契約金額」「保険内容」「車両の状態」「契約解除に関する条項」をチェックして、納得してから署名捺印するようにします。
印鑑証明の用意
契約する車が普通自動車の場合には、「印鑑証明書」が必要です。発行後3ヶ月以内のものを求められることが多くあります。
ただし、販売店でローンを組んで社用車を購入する場合は、所有者は販売店または信販会社となりますので不要です。
商業登記簿謄本の提出
契約する車が軽自動車の場合には、「商業登記簿謄本(抄本)」「登記事項証明書」「印鑑証明書」のいずれかひとつが必要になります。
任意保険の手配
自賠責保険の補償ではカバーできない範囲の損害を補うのが任意保険です。 任意保険は運転のリスクに幅広く対応しますので、必ず契約するようにします。
保険種類の選定
会社の状況に合わせて、以下のような補償を組み合わせます。
- ①「対人賠償保険」。相手方を怪我や死亡させた場合、支払う賠償金を補償する。自賠責保険の補償額の不足分を補う。保険金額は無制限とするのが一般的である。
- ②「無保険車傷害保険」。無保険の車や逃走した車によって、自分や同乗者の後遺障害や死亡した場合に支払う賠償金や自賠責保険の補償額の不足分を補償する。相手が特定できない場合や支払い能力がない場合にも対応する。
- ③「対物賠償保険」。相手方の車や、建物などの財産を破損した場合、支払う賠償金を補償する。保険金額は無制限とするのが一般的である。
- ④「車両保険」。自分の車が破損した場合、自分の車の修理費用や買い替え費用を補償する。自分の過失や自然災害などにも対応する。保険金額は自分の車の時価額とするのが一般的である。
- ⑤「人身傷害補償・搭乗者傷害」。自分や同乗者が怪我や死亡した場合、治療費や入院費、後遺障害や逸失利益などの損害を補償する。人身傷害補償は実損額を補償し、搭乗者傷害は定額を補償する。
- ⑥「各種特約」。①〜⑤の基本補償に加えて、自分のニーズに合わせて選べるオプション。「弁護士費用特約」「他車運転特約」「ロードサービス費用特約」などがある。
保険契約の手続き
保険会社ごとに内容が異なります。「補償内容」「保険料」「保険金支払い」「契約期間」の4点について、複数社の比較検討をするようにします。
保険証書の確認
「保険証書」とは保険の契約内容を証明する書類です。「氏名」「住所」「契約車情報」「保険期間」「補償内容」「保険料」などが記載されていますので、内容を確認するようにします。
納車時の対応と手続き
納車時には注意すべきポイントが多くあります。1つずつチェックして、抜け洩れのない手続きを進めましょう。
車両の受け取り準備
販売店とこまめに連絡を取って、スムーズに納車してもらえるように準備をしていきます。
納車日のスケジュール調整
販売店のほうから納車日の候補日を提示することが多くありますが、購入者の都合や希望を伝えることもできますので、早めに調整します。
納車場所の確定
購入者と販売店の間で話し合って決めます。「店頭引き渡し」と「会社拠点引き渡し」がありますが、会社拠点の場合には陸送費がかかりますので注意が必要です。
拠点がない場合の代替策
会社拠点内に車庫が無い場合には、月極駐車場等を保管場所に指定し、事前に「車庫証明書」を取得する必要があります。
納車時の確認事項
実際の車両を目視で確認し、疑問点があればすぐに販売店へ確認するようにします。
車両状態の確認
車両のタイプやボディカラーが契約通りかどうか、外装や内装に傷はないかどうかを入念にチェックし、相違点があればすぐに販売店へ相談します。
付属品の確認
選択した後付けのオプション品が契約通りに装着されているかどうか、取付具合と場所が適切かどうかを確認します。
納車書類のチェック
納車書類には「自動車検査証(車検証)」「自賠責保険証明書」「自動車納税証明書」「リサイクル預託証明書(リサイクル券)」「保証書」「取扱説明書」があります。氏名や住所、車両番号、有効期限に間違いや不備がないかを確認します。
納車後の手続き
納車されてから実際に運転する前に、必要な手続きが完了しているか確認していきます。
車両の登録手続き
普通自動車の場合、陸運局への登録前に「車庫証明書」を取得する必要があります。 軽自動車の場合、「保管場所届出」を提出する場合もあります。名義変更、ナンバープレートを取得後に、管轄の警察署へ届出をします。
税金関連の手続き
車を取得すると必要になる税金は以下の通りです。
- ①環境性能割:取得時に環境性能に応じて課される。車の新規登録と同じタイミングで納める。
- ②自動車税:排気量や使用目的に応じて計算される。毎年4月1日の時点で車を所有していると、支払い義務が発生する。
- ③自動車重量税:重量に応じて課される。新車の場合は購入時に支払い、以降は車検ごとに支払うのが一般的である。
車検証の保管
「車検証」は自動車に常備することが義務付けられています。車検証に記載の内容を確認後は、グローブボックスの中に入れて保管しましょう。
社用車納車後の運用開始
管理をする会社や担当部署が、関連する従業員へ周知徹底させることが必要です。一方通行にならない運用を心掛けましょう。
運用前の社内プロセス
事故や違反をなくすために、規則やルールがあるのかを確認します。
社内規則の確認
会社に明文化された「車両管理規定」があるかを確認します。規定がない場合にはルールがあるのかを確認し、どちらもない場合には作成します。
利用者への通知
従業員へ新規で社用車が配備されたことを通知し認識させます。幅広く周知徹底させることが大事です。
管理体制の構築
担当部署、責任者、担当者を明確にし、点検、整備、運転免許更新を管理します。変更点がある場合には、即時更新します。
運転者の選定と教育
実際に運転する従業員をリストアップし、カリキュラムを組んで指導します。
運転者の資格と選定
「社内免許制度」を策定し、許可を与えた従業員のみに運転許可を与えることで、運用の秩序が守られます。
安全運転研修の実施
「新入社員」「一般社員」「事故惹起者(過去に事故を起こした者)」向けに定期的な研修を実施して、企業リスクを減らすことが大事です。
運転記録の管理
「車両使用台帳」や「運転日誌」を策定し、従業員へ日々の行動を記録するよう指示します。
保守とメンテナンス
車の寿命は、保守メンテナンスで大きく変化します。数年後に下取りに出した場合の評価にも差が出る可能性があります。
定期的な車両点検
会社は「保安基準」に適合するよう維持するために、点検及び整備の義務があります。従業員は1日1回、運行開始前の日常点検を励行し、不調があればすぐに報告する環境を作ります。
事故発生時の対応計画
会社は、事故発生時の基本的な対応について従業員へ周知させます。 「けが人救助」「二次被害防止」「警察への連絡」「現場確認」「相手方情報入手」「目撃者確認」の順番に行動し、個人間での示談交渉は絶対にしないように指導します。
保守記録の管理
「記録簿」や「台帳」を作成し運用します。安全性を保ち性能を維持し故障を予防することが、維持コスト削減にも繋がります。
社用車納車後の継続的な管理とサポート
日々の管理を継続していくことが重要です。管理がしっかり行われているかどうか、運転に従事する従業員のサポートを忘れずに行うようにしましょう。
長期的な車両管理計画
次回買い替えまでのスケジュールを作成し、継続して管理します。
定期メンテナンスのスケジューリング
「車両管理台帳」を作成しスケジュール化します。以下の内容を記すようにします。
- ①本体情報:メーカー名や車両番号、車両の登録日。
- ②使用状況:安全性維持のために必要な情報。車検や整備の期限や内容、事故や修理の歴史や内容、車両の運転者や使用部署。
- ③保険情報:リスクマネジメントのために必要な自賠責保険や任意保険の契約日や満了日、保険金額や保険会社、保険の内容。
車両性能のモニタリング
車両の状態や性能を定期的に測定し、購入時との比較をします。変化点に対してメンテナンスを施し、寿命や価値を延ばします。
交換部品の管理
車検や点検で交換した部品、オイル交換などを記録するようにします。適切な時期に対処することで、維持コストを最適化し寿命を延ばします。
従業員サポートとトレーニング
どのように運転に従事する従業員をサポートしていくのかをまとめました。
運転安全トレーニングプログラム
「運転適正検査」「運転技能チェック」「座学・実技研修」を通じて、従業員の運転能力を向上させます。
事故発生時の対応トレーニング
前述した事故発生時の基本的な対応方法について、ロールプレイングを用いて教育することは有効な施策です。
従業員の健康と安全への配慮
万が一、事故が起きた場合には、従業員の身体面やメンタル面についてケアをします。 心身の健康に不安がある時に事故は起こりやすいものです。普段から、従業員の健康管理を徹底していくことが重要です。
まとめ
社用車の納車は、会社にとって大きなイベントです。社用車の適切な管理と運用で、従業員へ安全運転を徹底させ、企業リスクの軽減に繋げます。今回、ご紹介したポイントを参考に、社用車の納車をスムーズに進めましょう。