社用車の車両管理について解説
社用車車検の基本プロセス
車検とは、公道を走る自動車の所有者に義務付けられた継続検査です。役割とルールについてしっかりと確認していきましょう。
車検の重要性と概要
なぜ車検が必要なのか、その重要性について説明します。
法的要件と安全基準の確保
車検は、道路運送車両法に基づき、道路を安全に走行するために必要な整備を実施します。保安基準をすべてクリアすることで合格となります。
車検の周期とタイミング
車検の周期ですが、営業車などの乗用車については、新車登録から3年後、その後は2年ごとになります。タイミングは、車検証の有効期間満了日の1ヶ月前からです。
車検の有効期間は検査標章(車検ステッカー)と車検証で確認することができます。 検査標章は、基本的に車のフロントガラス上部に貼られていて、検査標章の表側には車検の満了年月、裏側には有効期間が満了する年月日が記載されています。
車検の対象となる主要項目
車検では、車両の構造や装置が道路運送車両法の保安基準に適合しているか、以下のような検査を実施します。
- ・登録と識別・・・車検を受ける車のエンジン番号や車台番号が、車検証の内容と一致しているかを確認。
- ・外観・・・タイヤ、ガラス、灯火装置、ワイパー、マフラーなどを確認。
- ・内装・・・各種メーター、シートベルト、発煙筒、ヘッドレストなどを確認。
- ・その他・・・予備検査場で、ブレーキ、排気ガス、サイドスリップ検査、ヘッドライトなどを確認。
車検前の準備と点検
自社や専門業者による点検と、車検準備について説明します。
自社での事前チェックリスト
社用車には点検や整備の義務がありますので、運行前点検(日常点検・定期点検)は確実に実施しなければなりません。
日常点検は、「ブレーキ」「タイヤ」「バッテリー量」「冷却水とエンジンオイルの量」「ファンベルト」「ライトや方向指示器の状態」「ウインド・ウォッシャー液の量」「ワイパーの状態」などを、運行開始前に1日1回実施します。
定期点検は、「かじ取り装置」「制動装置」「走行装置」「緩衝装置」「電気装置」「原動機」「動力伝達装置」などを3か月ごとに実施します。
専門業者による事前診断
車検前に、専門業者による診断を受けることができます。本検査前に、車検時にチェックされる「ブレーキ」「ライト」「タイヤ」の状態などを確認し、不具合が見つかった場合はその場で修理や交換を行います。車検の際に不合格となるリスクを減らせるでしょう。
必要書類の準備と整理
車検には、「車検証」「自動車税納税証明書あるいは軽自動車税納税証明書」「自賠責保険証明書」などの書類が必要になります。
車検当日のプロセス
車検がどのような手順で実施されるのか説明します。
持ち込み車検と代行車検の選択
持ち込み車検とは、ユーザー車検ともいわれ、使用者自身が運輸支局あるいは軽自動車検査協会に自動車を持ち込んで受ける車検のことです。整備だけではなく、書類などの事前準備も必要です。コストを抑えられ、自動車や車検制度についての理解は深まりますが、手間と時間を要します。
一方、代行車検とは、専門業者が検査を代行します。そのため安心感がありますし、手間と時間も掛かりません。ただしその分、コストは高くなります。
車検中の車両状態確認
持ち込み車検では車両状態を実際に確認することができますが、代行車検では業者に一任しているため確認は難しくなり、後ほど報告を受けることになります。
車検完了後の書類受け取り
完了後には、「新しい車検証」「新しい自賠責保険証」「車検整備の記録である点検結果記録簿」を必ず受け取るようにします。
社用車保険見直しの基本
社用車に掛けている任意保険は見直しが可能です。自社のニーズと照らし合わせて、過不足のないプランを導き出しましょう。
保険見直しの必要性とタイミング
保険見直しがなぜ必要なのか、いつ見直すべきなのかを説明します。
契約更新時のチェックポイント
契約更新時には、契約内容や住所などの基本情報に変更がないかを確認するとともに、補償内容の見直しが必要ないかを確認します。
企業ニーズの変化に伴う見直し
更新手続きが可能な期間は、保険会社ごとに定められています。社用車の運用スタイルや使用頻度を照らし合わせて、補償内容や付帯サービスに過不足がないかを確認します。
保険プランとカバレッジの評価
保険のプランによってカバレッジ(保障範囲)は異なります。一項目ごとに評価し、最適なプランを作り上げることが重要です。
現行保険プランの分析
前述しました通り、自社のニーズと運用スタイルは日々変化しますので、その時々に最適な契約となっているか分析が必要です。
カバレッジ内容の精査
保険のカバレッジと保険金額は比例しています。一項目ごとにプランの詳細を洗い出す必要があります。
不足または過剰な保険項目の特定
最新の自社ニーズと運用スタイルから、カバレッジの過不足が浮かび上がった時には、契約の見直しを保険会社に申請します。
保険料のコスト効率と最適化
保険の全ての項目はコスト反映されていますので、定期的に見極める必要があります。
保険料の市場比較
保険会社は、顧客を獲得するために強みと独自性を打ち出しています。一社のみで判断せずに、相見積もりをし比較することが大事です。
コスト削減の機会
プランが過剰であれば、その分支払いが多くなってしまいます。反対に必要なプランが組み込まれていないかもしれません。契約更新時に再度現行のプランに過不足がないか確認しましょう。
長期契約と割引の活用
通常、保険料の支払いは年払いや月払いが多くなっていますが、3年や5年の長期一括払いにより割引される場合があります。途中での内容変更が難しい場合がありますので注意が必要です。
タイヤの基本理解
自動車の三大機能である「走る」「曲がる」「止まる」の全てにタイヤは関係しています。その役割と重要性について理解しましょう。
タイヤの摩耗と交換の重要性
タイヤは、路面と接触することで徐々に摩耗していきます。そして摩耗が進むとリスクは大きくなります。
タイヤ摩耗の安全性への影響
タイヤが摩耗すると、路面との摩擦力が低下します。制動力が低下し、ブレーキをかけても自動車がすぐに止まらない可能性が出てきます。
また、摩耗したタイヤは、雨天時など路面が滑りやすい状況でスリップしやすくなります。これは、タイヤの溝が摩耗して排水能力が低下し、ハイドロプレーニング現象(タイヤが水たまり上を滑る現象)が起きやすくなるためです。
正しい摩耗レベルの判定方法
路面とタイヤが接触する部分のゴム層の面をトレッドといい、溝の中にある少し盛り上がった部分がスリップサインです。溝の深さが1.6mmになると、その盛り上がった部分がトレッド面と同じ高さになり、タイヤの限界を示しています。更に正確に測定するには、簡単な検査計器(ディプス・ゲージ)を利用することができます。
交換のタイミングと安全基準
以下に示すどれかに当てはまった場合には、交換時期となります。
- ・残り溝の深さ:タイヤの溝が1.6mm以下になると、道路交通法に違反し、車検に通らなくなる。実際には徐々にグリップ力は落ち込むので、安全走行のためには溝の深さが4.0mm以下になったら交換するのがおすすめ。
- ・製造からの経過年数:タイヤはゴム製品であり、時間の経過とともに劣化する。そのため、製造から10年が経過したタイヤは交換推奨となる。メーカーは使用開始から5年ほどでの交換を推奨している。
- ・走行距離:使用環境によって摩耗の具合は変わるが、目安として5,000kmの走行で1mmほどタイヤが摩耗するため、交換からの走行距離を把握する。
タイヤの種類とその特性
どのような環境を走行するのか、どのような性能を求めるかによって選択するタイヤが変わってきます。
オールシーズンタイヤとシーズンタイヤ
シーズンタイヤは、夏用タイヤと冬用タイヤに分類されます。
夏用タイヤは、気温が40℃近くに達するような暑い季節に、使用することを想定し設計されていて、降雪や路面凍結のない地域では1年を通じて使用することができます。
次に、冬用タイヤは、氷や雪といった厳しい環境下で、安全に走行するために設計されていて、夏用タイヤに比べ溝は深く複雑な模様をしています。
一方でオールシーズンタイヤは、夏用タイヤと冬用タイヤの技術を組み合わせています。気候が穏やかで、冬はたまにしか雪が降らないような地域にお住まいの方に、特におすすめです。
パフォーマンスタイヤの特徴
パフォーマンスタイヤは、サーキットなどでの高速走行を想定したタイヤです。一般的なタイヤよりも優れた操縦性やグリップ力があり、「加速」「制動」「コーナリング」などの性能を向上させる設計となっています。ただし、一般的なタイヤに比べて摩耗が早い傾向があります。また、雨天や雪道などの悪路では性能が落ちる可能性もあります。
タイヤの用途と適切な選択
走行目的と車両タイプ(セダン、ミニバン、ワゴンなど)に合ったタイヤを選ぶことで、性能を最大限に発揮できます。社用車には、燃費向上を売りにしている低燃費タイヤを選択することをおすすめします。
タイヤの保管と寿命
タイヤの保管方法によって、寿命は長くも短くもなります。推奨される方法について説明します。
適切なタイヤ保管方法
タイヤを保管する前には、汚れを落とし、異物をチェックし、しっかりと水分を乾燥させて保管します。保管時の置き方ですが、ホイール付きの場合には、空気圧を適正値の半分くらい(1〜1.5kpa)にし、横置きで保管します。ホイール無しの場合には、変形やサイドウォールの傷みを防ぐために縦置きで保管します。どちらも変形を防ぐために、定期的に設置面を入れ替えることがタイヤの劣化を抑える秘訣です。
タイヤの平均寿命と使用条件
一般的に、タイヤは約4万キロメートルの走行距離に耐えられ、製造からの寿命は最長10年とされています。しかし、走行距離や寿命は、使用状況や保管状況により大きく変わります。大事なのは、数字のみで判断せず、状態を点検の上、適切に判断し必要であれば交換することです。
保管状況によるタイヤの劣化
タイヤのゴムは「直射日光」「水分」「熱」「油」「オゾン」などによって劣化しますので、ガレージや物置などの屋内冷暗所保管が理想的です。タイヤラックやカバーなどの保管用具を使用すると、タイヤの劣化を最小限に抑えて保管できます。
社用車修理の基礎知識
自動車修理を必要とする場面はさまざまあります。修理の大小に関わらずコストは発生しますので、しっかりと把握しておきましょう。
修理が必要となる一般的な原因
どのような原因で自動車修理が必要になるのかを説明します。
事故による損傷
事故の状況や衝撃の大きさで損傷の程度は異なります。大きな事故になると、車体外装を中心に、エンジンルーム内や電子部品など多岐に渡る場合があります。
通常の摩耗と老朽化
自動車はたとえ走行していなくても、雨や風、日光などに長い期間さらされているため、鉄やゴムなどでできている各部品の劣化が進みます。
急な故障とその予兆
エンジンやタイヤ、ブレーキなどから異音や異臭がする場合、アクセルを踏んでもパワーが出ない、ブレーキの効きが悪い、ハンドル操作が重いなど、運転中に違和感を感じることが出てきます。その場合、何らかの故障が発生している可能性があります。
また、メーターパネルの警告灯が点灯する場合には、エンジンやバッテリー、オイルなどの問題を示している可能性があります。
修理プロセスのステップ
どのように修理を依頼すればいいのかを説明します。
故障診断の重要性
故障原因の特定は、自社で状態確認するよりも、自動車修理の専門家に診断を委ねるほうが得策です。視覚的な検査に加え、OBDといわれる車載式故障診断装置を利用して、車載された電子制御装置に故障がないか等を点検します。
修理見積もりの取得
修理見積は、自動車を購入したディーラーや自動車販売店に依頼できます。ほかにも、「自動車用品店」「ガソリンスタンド」「修理工場」などで取得が可能です。それぞれにメリットとデメリットがありますので、自社の条件に合った修理先を選ぶことが重要です。
修理工程の透明性
透明性を確保するためには、「修理に必要な部品のリスト」「修理の手順」「予想されるコスト」などの詳細な情報を提供してもらいます。
修理工程を説明してもらうことも重要です。これにより、修理がどのように行われるのかを理解し、必要性やコストに納得することができます。
社用車修理の資金計画
定期的な車検のほかに、突発的に発生する修理もあります。しっかりと計画を立てて、必要な時に慌てず対処できるようにしましょう。
修理予算の設定
会社の財務状況を考慮し、修理に割り当てる予算を設定します。 修理が発生した時には、必要性と見積もりの情報に基づいて資金を調整します。
修理費用の管理
社用車の修理費用は経費に算入可能なため、経費計上して問題ありません。 ですが、日頃から必要十分なメンテナンスを実施し安全性を確保しつつ、コスト管理を行うようにします。
予想外の修理コストへの対応
上記の修理予算には予備費を設けておき、資金不足とならないように留意します。同時に、保険の適用とならないかを確認します。
まとめ
社用車は会社の売上をあげる大事なツールです。保有している期間には、さまざまなイベントが発生しコストも伴いますが、しっかり管理・運用できるようにしましょう。